警備会社のなのはな警備(千葉県流山市)が路上で交通誘導に携わる警備員向けにVR(仮想現実)を用いた研修システムを開発した。ゴーグルを装着して目の前の映像を眺めることで、難易度が高く危険な場面での誘導などを現場に行かなくて安全に体験することができる。秋から警備会社向けに販売を始める。
研修システム「トラフィックコンダクター」は、事故が起きやすい15場面をCG(コンピューターグラフィックス)映像で再現した。VRゴーグルを装着し、コントローラーを誘導灯として動かして実際に停止の合図などが出せたかを判定し採点する。
例えば救急車のような緊急車両が来た際に他の車をしっかり停止できるかといったことを確認できる。VRゴーグル内の映像は外部のディスプレーにもリアルタイムに投映でき、指導員が合図のタイミングなどを指導できるようにした。
従来の研修は現場任せだったが、実際には様々な状況が選べずに十分な効果をあげることが難しい面もあったという。VRであれば場面や状況を選べるため、緊急車両、枝道、夜間、バック誘導など難易度の高い場面を現場研修前に体験することができる。
またVRでの体験なので繰り返し何度でも、安全に体験が可能だ。実地研修としては認められないが、視聴覚教材による実技研修として換算できるという。
11月まで1社につき1回、1週間無料で試用できるようにした。VRゴーグルを1営業所あたり1台、最大2台貸し出し、実際に研修で使ってもらう。
秋以降には月額4万4000円でサービスを提供する。VRゴーグル代は別途かかり、システムの利用人数が50人を超えると、50人ごとに5000円が追加で必要とする。
同社はイベントなどの警備が売り上げの1割ほどを占めていたが、新型コロナウイルスの影響で需要がほとんどなくなっていた。交通誘導の警備業務も、他社との競争が激しくなったという。
そこで国の事業再構築補助金を活用し、新事業として研修システムの開発を進めた。田中一善社長は「警備業界での人材の質低下や旧態依然の教育体制に問題意識を感じていた。IT(情報技術)を活用して問題を解決し、人材育成と教育の効率化、均一化を実現したい」と述べた。